2022年12月24日

恐怖の消費税シリーズ!#10「死を呼ぶ赤いインボイス制度!」


【予告編】(例のBGM)
昨日の夜、小さな事業者を免除して、薄い税率を妥協の帳簿方式で取り入れた。
今日の昼、小さな免税事業者を、厚い税率と本家の伝票方式(インボイス制度)で根こそぎ潰して、人殺しの税収を育てていた。
明日の朝、死せる日本の血の匂いが暗闇をどこまでも充たしているだろう。
明後日、そんな先のことはわからない。
さて、インボイス制度であるが、この話に入る前に今一度、消費税と称する付加価値税について簡単におさらいしておきたい。

出 自:付加価値税は、1950年代にGATT(関税および貿易に関する一般協定)に輸出企業への補助金を禁じられた中、フランスが何とかして輸出企業(ルノー)を補助したいという執念で考え出した税制。
計算式:納税額=(売上に含まれる税額―仕入れに含まれる税額)。
輸出取引の場合、前者は必ずゼロになるので、納税額は仕入れに含まれる税額分のマイナスとなり、これを輸出企業に還付した。GATTが禁じた補助金ではなく、税金の還付だという理屈である。消費税はこの計算式をそのまま採用している。俺が消費税を「消費税と称する付加価値税」と呼ぶ所以だ。もちろん、輸出取引への補助金という性質もしっかり引き継がれている。

フランスがこの付加価値税を導入する際に、仕入れ税額を正確に把握するために、仕入れ側に「税率と税額を記載した伝票」を添付させるようにした。その伝票こそがインボイスである。税率と税額を記載するのだから、インボイスを発行できるのは課税事業者に限られる。インボイスのメリットとしては複数税率(軽減税率)の運用が可能。例えば標準税率が20%と高くても、生活必需品等にはゼロ%や低い税率を設定できる。デメリットとしては事務負担の増大と、課税事業者はインボイスが無いと仕入れ税額控除が出来ないため、必然的に免税業者が取引きから排除されるか、課税事業者への転換を余儀なくされる。

ではなぜ日本の消費税と称する付加価値税はインボイスを導入していなかったのか。シリーズ#03でも説明したが、中曽根内閣が検討していた売上税は伝票方式(インボイス制度)であった。売上税は公約違反と事務負担が大きくなる伝票方式への批判が大きく、廃案となった。そこで、竹下内閣は名称を「消費税」、タイプを「帳簿方式」に変更して、税率3%・軽減税率なしで「消費税」をスタートした。
「帳簿方式」とは事業者側の自己記録で、売り手側の請求書にインボイスのような消費税額や消費税率が記載されていなくても、単一税率であれば税込み請求額から仕入れ税額を算出でき、納税事務を簡素化できる。事業者側には作成した帳簿と仕入れ先からの請求書の保存が義務付けられている。

「帳簿方式」の問題点としては、単一税率を前提にしているため、複数税率(軽減税率)の運用がほぼ無理であることと、免税業者から仕入れた際の課税事業者側の益税問題がある。免税業者は消費税を課税されない(*1)ので、輸出免税と同じく消費税率0%で課税事業者への販売価格に消費税は存在しない(輸出免税と異なるのは、仕入れ税額の還付を受けられないという点のみだ)。しかし、課税事業者側では仕入れ業者が免税業者だろうが課税事業者だろうが関係なく、どちらでも仕入れ税額控除が可能なのだ(*2)。

図1【輸出取引の価格構成】消費税納税額:0円30円 ―30円 
販売価格=売上(1,100円)、消費税は免除で税率0
税込み仕入れ(330円)
粗利(770円)
仕入れ
本体価格
(300円)
仕入れ
消費税
(30円)
利 益
(270円)
人件費
(500円)
納税額
(―30円)
粗 利
(770円)
輸出取引はマイナスになった仕入れ消費税分の還付を翌年度に受けられる(還付加算金付き)。

図2【免税業者の価格構成】消費税納税額:0円30円 ―30円 
販売価格=売上(1,100円)、消費税は免除で税率0
税込み仕入れ(330円)
粗利(770円)
仕入れ
本体価格
(300円)
仕入れ
消費税
(30円)
利 益
(270円)
人件費
(500円)
負担額
(―30円)
粗 利
(770円)
免税業者はマイナスになった仕入れ消費税分の還付を受けられない。

図3【免税業者から仕入れた課税業者の価格構成(帳簿方式)】免税仕入れを税込み扱い。
  消費税納税額:300円100円 200円 
販売価格=税込み売上(3,300円)
免税仕入れ(1,100円)
税込み粗利(2,200円)
みなし
仕入れ
本体価格
(1,000円)
みなし
仕入れ
消費税
(100円)
税込経理の利益(1,000円)
人件費
(1,200円)
納税額
(200円)
税抜経理の
利益(800円)
売上消費税
(300円)
粗利
(2,000円)

図4【免税業者から仕入れた課税事業者の価格構成(インボイス方式)】
  消費税納税額:300円0円 300円 
販売価格=税込み売上(3,300円)
免税業者
仕入れ
(1,100円)
インボイス無し
税込み粗利(2,200円)
税込経理の利益(1,000円)
人件費
(1,200円)
納税額
(300円)
税抜経理の
利益(700円)
売上消費税
(300円)
粗利
(1,900円)

つまり、免税業者から仕入れた場合、課税事業者は免税業者からの仕入れ額に消費税は存在していないのに、仕入れ税額控除時には消費税が含まれた税込み金額とみなして売上税額からの控除対象に含めることが可能なのだ。昨今、インボイス制度の導入理由として消費税を預り金と勘違いしている人たちが免税業者には益税があるから、それを無くすために必要だという誤った主張があるが、話は真逆で、益税があるのは免税業者から仕入れた課税事業者側なのである。

更に加えて、財務省は2004年4月から義務となった消費税における「総額表示方式」の概要で、免税業者の価格表示について下記のように記している。
免税事業者は、取引に課される消費税がありませんので、「税抜価格」を表示して別途消費税相当額を受け取るといったことは消費税の仕組み上予定されていません。
・したがって免税事業者における価格表示は消費税の「総額表示義務」の対象とされていませんが、仕入れに係る消費税相当額を織り込んだ消費者の支払うべき価格を表示することが適正な表示です。

この記述からも、免税業者の販売価格には「売上に含まれる消費税額」がゼロであることが分かる。総額表示しようにも肝心の「消費税」が無いから、表示義務の対象外なのだ。つまり、免税業者の販売価格(請求金額)が1,100円の場合、下記のようになる。
免税業者の販売価格 1,100円
誤:税抜価格1,000円、消費税100円
正:価格1,100円(消費税0円)

「仕入れに係る消費税相当額」は、免税業者の仕入額が税込み330円の場合、当然、消費税相当額は30円なわけだが、「消費者の支払うべき価格」とは、要は税込み仕入れ額330円に素直に粗利を乗せた価格が適正な表示(上の例では1,100円)だという、つまり、売上=仕入れ+粗利という当然の話を財務省が小難しく記述しているに過ぎない。

ちなみに、免税業者が販売時に消費税を請求できるのか、について検索したら、当然、財務省や国税庁はヒットしなかった。ヒットしたのは会計ソフト会社等で、俺が見たページはすべて「免税業者でも消費税を請求できる」としていたが、どれも「消費税は預り金」という前提の説明だったので、参考にならなかった。ただ、実務では免税業者も消費税を含んでいないのに請求書の請求額を「税込み」と表記して課税事業者に渡しているケースがほとんどではないだろうか。現行の帳簿方式では、請求書に免税業者か課税事業者かは記載事項として要求されていないため、それで通るからだ。
現行の帳簿方式がいかに妥協の産物であるか、伝票方式と比較するとよく分かる。

業者事項帳簿方式(現行)伝票方式(インボイス)
免税業者
請求額に消費税を含められるか(課される消費税はゼロだけど)
「総額表示義務」対象外。
実務では請求書を税込みと表記?
インボイスを発行できない
課税事業者
免税業者からの仕入れ税額控除
不可能

前段が長くなってしまったが、来年10月1日から予定されているインボイス制度は、この制度が有している免税業者潰しの面がクローズアップされて問題となっている。どんぶり勘定事務所の神田税理士は、適格請求書(インボイス)発行事業者の登録をぎりぎりの9月30日まで待つ「ボイコット大作戦」を展開されている。インボイスを発行できる登録事業者数が少なければ、この制度自体が運用出来ないからだ。
それと併せて、財務省や国税庁には「インボイス制度を導入するからには、当然、生活必需品等への欧州並みの軽減税率(標準税率の半分以下*3)を即実施するんですよね」と問い合わせたり、要求していけば良いと思う、揺さぶりをかける意味合いで。

ここからは、インボイス制度の導入で免税業者がどれくらい大きな被害を被るのかを見ていく。まずは、財務省の国会答弁(第198回国会 財務金融委員会 第3号(平成31年(2019年)2月26日) 日本共産党 宮本(徹)委員の質疑に対する星野政府参考人(財務省主税局長)の答弁)から引用しよう。
・増収見込み:2,480億円
・免税事業者:488万者(平成27年(2015年)国勢調査による)
・試算対象除外:116万者(農協等に出荷する農林水産業、非課税売上が主たる事業者)
・試算対象:残り372万者の内、BtoB取引の割合4割程度の161万者が課税事業者に転換する計算(非転換者は211万者になる)。
つまり、2,480億円を161万者で支払う計算で、1者当たり約15万4千円となる。で、前提となる免税業者の事業規模は下記の通りだ。
・課税売上高:550万円程度(免税事業者の平均額)
・付加価値率:28%程度で粗利154万円、その10%を納税。
要は年収154万円の人に15万4千円払えと言っているわけで、とんでもない重税である。しかも非転換者としてインボイスの発行が求められない例として、BtoC(顧客が消費者である小売業者)や納入先事業者が簡易課税の場合はインボイス無しでも仕入れ税額控除が出来るから取引から排除されることはないと答弁しているが、小売業者でも会社の利用はあるだろうし、簡易課税はインボイスの導入を機に、この先潰していく気満々のくせに白々しい答弁だと思う。

想像してみて欲しい。年収154万円の月収は約12万8千円、15万4千円の消費税で1か月分以上の月収が吹き飛ぶのだ。「死ね」と言っているような、ではなくまさしく「死ね」と言っているのだ。このインボイス制度で影響を受ける職種を三橋貴明氏が動画で列挙していたが、フリーランス、個人事業主、一人親方、個人タクシー、農家、商店、スポーツ選手、音楽家、歌手、劇団、声優、アニメーター、駆け出しの役者さんなどなど。。。まだまだあるだろう。全国商工団体連合会のインボイスページによると人数は一千万人以上、職種は50種以上もある。そして、NHK首都圏ナビで有賀ディレクターの丁寧な取材で、インボイス制度の影響を受ける方たちを取材したWEBレポートが12月16日にアップされていたので、具体的なケースを引用する。
ケース1:S氏
職種:個人事業主
内容:住宅機器メーカーからの請負
状況:インボイスの発行を求められている(課税事業者への転換)
年収:約500〜600万円、経費:約430万円、手取り:約120万円
課税事業者に転換した場合の負担:約20万円

ケース2:Wさん
職種:フランス料理店経営
状況:コロナ禍で事業者への弁当や他飲食店への手造りソーセージ卸売などで売上を確保。特に弁当は売上の1/4以上を占める(年間契約)。会社員の接待利用も月10組以上あり、請求書を求められる。今年、輸入牛肉等の値上がりで料理やお酒を値上げしたばかりなので、消費税分の上乗せは厳しい。

ケース3:赤帽
軽貨物運送業を営む個人事業主の協同組合。組合員(ドライバー)の約9割が免税業者。
状況:「仕入れ税額控除」を受けるにはドライバーからのインボイスが必要だが、2,400人の組合員のうち、登録手続き者は100人に満たない。ある70代男性ドライバーの場合、手取り200万ほどで、課税事業者になると年間18万円ほどの負担増。組合員の平均年齢は64歳なので、課税事業者になった場合の負担増を考えると、廃業検討者が増えて、運送業界の人手不足の深刻化が懸念される。

やはり財務省は血も涙もない、赤い悪魔だ。

【予告編】(例のBGM)
現実という岩板を穿つ尖兵は常に蟻の一穴。
日本経済を瀕死に追い込む「財政破綻論」と「消費税」、この現実を穿つものは何か。
強行されようとする「インボイス制度」がそれであったと、後の歴史家は知るだろう。
『パンドラの箱』は開かれた。

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posted by 三森羊一 at 08:00| Comment(0) | 消費税 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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